部分分数分解を簡単に行う手法である。

$f(x)=A \displaystyle\frac{(x+q_1)(x+q_2)\cdots(x+q_m)}{(x+p_1)(x+p_2)\cdots(x+p_n)} \ \ \ \ (n>m)$

について

$f(x)=\displaystyle\frac{a_1}{x+p_1}+\frac{a_2}{x+p_2}+\cdots+\frac{a_n}{x+p_n}$

としたとき、$a_i=\lim\limits_{s\to -p_i}(x+p_i)f(x)$ によって各$a_i$を簡単に求められる。

分母に$(x+p_i)^k$等の重根を持つ場合は[ヘビサイドの展開定理2](https://www.studyport.jp/p/cm9yj32b30000wd2r8zlbvf37) を参照。


studyport【公式】

Alta

ヘビサイドの展開定理

重根を持つ分母多項式を部分分数分解する。

$f(x)=\dfrac{g(x)}{(x-p_1)^k(s-p_{k+1})\cdots(x-p_n)}$

$=\dfrac{a_{11}}{(s-p_1)^k}+\dfrac{a_{12}}{(s-p_1)^{k-1}}+\cdots+\dfrac{a_{1k}}{(s-p_1)}+\cdots$

のとき、$s=p_1$ における留数$a_{11}, ...a_{1k}$ は以下で求まる。

$a_{11}=\lim\limits_{x \to p_1}(x-p_1)^kf(x)$

$a_{12}=\lim\limits_{x \to p_1}\dfrac{d}{dx}(x-p_1)^kf(x)$

$a_{13}=\lim\limits_{x \to p_1}\dfrac{d^2}{dx^2}(x-p_1)^kf(x) \ \ \cdots$

ヘビサイドの展開定理２

**定義**

$X(s)=\mathcal{L}[x(t)] = \int_0^{\infty} e^{-st} x(t)\,dt$

#### 簡単なラプラス変換表

| 時間領域の関数 $x(t)$ | ラプラス変換 $X(t)$ |
|:----------------------|:--------------------------------|
| $1$ | $\dfrac{1}{s}$ |
| $t$ | $\dfrac{1}{s^2}$ |
| $t^n \; (n \in \mathbb{N})$ | $\dfrac{n!}{s^{n+1}}$ |
| $e^{at}$ | $\dfrac{1}{s - a} \quad (\operatorname{Re}(s) > a)$ |
| $\sin(\omega t)$ | $\dfrac{\omega}{s^2 + \omega^2}$ |
| $\cos(\omega t)$ | $\dfrac{s}{s^2 + \omega^2}$ |
| $e^{at} \sin(\omega t)$ | $\dfrac{\omega}{(s-a)^2 + \omega^2}$ |
| $e^{at} \cos(\omega t)$ | $\dfrac{s-a}{(s-a)^2 + \omega^2}$ |


ラプラス変換

以下のように数を縦（列）と横（行）に長方形上に並べたもの

$A = \begin{bmatrix} a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \\ a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{m1} & \cdots & \cdots & a_{mn} \end{bmatrix}$

また，$i$ 行 $j$ 列にある要素を行列$A$の$(i,j)$成分といい，$a_{ij}$と書く

行列の定義

実数$a, b$の絶対値について、以下の不等式が成り立つ。

$|a+b|\leq ||a|+|b||$

$||a|-|b|\leq |a-b|$

はにわ

絶対値の不等式

$\mathbb N$：自然数全体 (natural number)

$\mathbb R$：実数全体 (real number)

$\mathbb C$：複素数全体 (complex number)

$\mathbb Z$：整数全体 (zahlen)

$\mathbb Q$：有理数全体 (quotient)

例えば$n\in \mathbb N$ と書けば自然数$n$ の意である。

集合を表す代表的な記号

逆行列とは、「かけると単位行列になるような行列」のこと。
つまり、ある正方行列 $A$ に対して、行列 $B$ が存在し、

$AB = BA = I$

となるとき、$B$ を $A$ の逆行列と呼び、これを $A^{-1}$ と表す。


$\textbf{可逆の条件：} \\
\det(A) \ne 0 \quad \Rightarrow \quad A^{-1} \text{ が存在する。}$

2×2 の具体例： $\\A =\begin{pmatrix}a & b \\c & d\end{pmatrix}\quad\Rightarrow \quad \\ \\ A^{-1} =\frac{1}{ad - bc}\begin{pmatrix}d & -b \\- c & a\end{pmatrix}\quad \\ \\ (\det(A) \ne 0)$


逆行列の定義

$0<|x-a|<\delta_0$で定義された関数$f(x):\mathbb R\rightarrow\mathbb R$ に対してその極限値 $b$ は以下で示される。



$\forall \epsilon >0, \exist \delta >0; \\ 0<|x-a|<\delta \Rightarrow |f(x)-b|<\epsilon$

ε-δ論法

行列の行において最初に出てくる非0の成分を主成分（pivot）という. 

以下の条件を満たす行列のことを簡約行列と呼ぶ.

①	主成分が全て１で主成分の上下は全て０.

②	主成分は右側の列にあるほど下側にある.

③	零ベクトルである行は非零ベクトルの行（主成分を含む行）より下側にある. 

例: $ \begin{bmatrix} 1 & 0 & 2 & 0 \\ 0 & 1 & 3 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{bmatrix} \quad \begin{bmatrix} 0 & 1 & 2 & 0 & 3 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \end{bmatrix}$

行基本変形によりすべての行列は簡約行列にすることができる. また，その簡約行列は一つに定まる. これを簡約化定理と呼ぶ.

ある行列Aを簡約化したときの主成分の個数を行列の階数$(rank)$といい $rank(A)$ と書く. 
上記の行列では共に $rank=3$ である.




行列の階数(rank)

2015年大阪大学の前期入試、「挑戦枠」という入試方式において、以下の問題が出題されました。

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数列$\{a_n\}を a_n=\dfrac{n!}{\sqrt{n}n^ne^{-n}}$ で定めたとき$\lim\limits_{n \to \infty}a_n=\sqrt{2\pi}$ を以下の手順で示せ。


　


(1) 数列 $\{b_n\}$を $b_n=\dfrac{2^{2n}(n!)^2}{\sqrt{n}(2n!)}$ で定める。$0<x<\dfrac{\pi}{2}$のとき$\sin^{2n+1}x<\sin^{2n}x<\sin^{2n-1}x \ \ (n=1,2,3,\cdot\cdot\cdot)$であることを用いて,$\lim\limits_{n \to \infty}b_n=\sqrt{\pi}$であることを示せ。



(2) すべての自然数nに対して$0<\log\dfrac{a_n}{a_{n+1}}<\dfrac{100}{n(n+1)}$が成り立つことを示せ。

(3)$\lim\limits_{n \to \infty}\dfrac{a_n}{a_{2n}}=1$であることを示せ。

(4)$\lim\limits_{n \to \infty}a_n=\sqrt{2\pi}$を示せ。

---

背景は題にもあるスターリングの公式です。$\lim\limits_{n \to \infty}\dfrac{n!e^n}{\sqrt{2\pi n}n^n}=1$ 　を示すことにより十分大きいnにおいて階乗を 　$n!\fallingdotseq \sqrt{2\pi n}\left(\dfrac{n}{e}\right)^n$　と一般に近似できます。この問題はこの極限について考える問題であり[ウォリス積分](https://www.studyport.jp/p/cm89vxvh30000zrnvcjip6rn8)を利用して導くことができます。

では、解答していきましょう。

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(1) まず $ I_n=\displaystyle\int^{\frac{\pi}2}_0 \sin^n xdx $ とおく。条件より$I_{2n+1}<I_{2n}<I_{2n-1}$であり、ウォリス積分より


$I_{2n}=\dfrac{2n-1}{2n}I_{2n-2} \\ =\dfrac{2n-1}{2n}\cdot\dfrac{2n-3}{2n-2}\cdots\dfrac{\pi}{2}
\\ =\dfrac{1}{2^n(n!)}\cdot\dfrac{(2n!)}{2^n(n!)}\cdot\dfrac{\pi}{2}
\\ =\dfrac{\pi}{2\sqrt{n}b_n}$

同様に、

$I_{2n+1}=\dfrac{2n}{2n+1}I_{2n-1}
\\ =\dfrac{2^{2n}(n!)}{(2n+1)!}
\\
=\dfrac{\sqrt{n}b_n}{2n+1}$

$I_{2n-1}=\dfrac{2n+1}{2n}I_{2n+1}
\\ =\dfrac{2n+1}{2n}\cdot\dfrac{\sqrt{n}b_n}{2n+1}
\\
=\dfrac{\sqrt{n}b_n}{2n}$

これより、

$\dfrac{\sqrt{n}b_n}{2n+1}<\dfrac{\pi}{2\sqrt{n}b_n}<\dfrac{\sqrt{n}b_n}{2n}$

整理して、

$1<\left(1+\dfrac{1}{2n}\right)\cdot\dfrac{\pi}{{b_n}^2}<1+\dfrac{1}{2n}$

ゆえに、はさみうちの原理より

$\lim\limits_{n\to\infty}\dfrac{\pi}{{b_n}^2}=1$

$b_n>0$より、$\lim\limits_{n\to\infty}b_n=\sqrt{\pi}$

　

(2) $\dfrac{a_n}{a_{n+1}}=\dfrac{1}{e}\cdot\left(\dfrac{n+1}{n}\right)^{n+\frac{1}{2}}$ より、

$\log\dfrac{a_n}{a_{n+1}}=\left(n+\dfrac{1}{2}\right)\log\dfrac{n+1}{n}-1$

よって

$\dfrac{2}{2n+1}<\log\dfrac{n+1}{n}<\dfrac{2}{2n+1}+\dfrac{200}{n(n+1)(2n+1)}$

を示せばよい。

ここで、$f(x)=\dfrac{1}{x}$ を考える。$y=f(x)$ は下に凸な関数であり、$\displaystyle\int^{n+1}_n \dfrac{1}{x}dx=\log\dfrac{n+1}{n}$ であるから、凸性より

$f(n+\frac{1}{2})<\displaystyle\int^{n+1}_n f(x)dx <\dfrac{1}{2} \{f(n)+f(n+1)\}$

すなわち

$\dfrac{2}{2n+1}<\log\dfrac{n+1}{n}<\dfrac{2n+1}{2n(n+1)}$

が成立し、$\dfrac{2n+1}{2n(n+1)}=\dfrac{2}{2n+1}+\dfrac{1}{2n(n+1)(2n+1)}<\dfrac{2}{2n+1}+\dfrac{200}{n(n+1)(2n+1)}$

であるから、これより題意は示された。

　


(3) いま、$\log\dfrac{a_n}{a_{2n}}=\displaystyle\sum\limits^{2n-1}_{k=n}\log\dfrac{a_k}{a_{k+1}}$ であり、これと(2)で示した不等式の各辺を足し合わせることによって、

$0<\log\dfrac{a_n}{a_{2n}}<\displaystyle\sum\limits^{2n-1}_{k=n}\dfrac{100}{k(k+1)}$

が導かれる。

$\displaystyle\sum\limits^{2n-1}_{k=n}\dfrac{100}{k(k+1)}=100\left(\dfrac{1}{n}-\dfrac{1}{2n}\right)=\dfrac{50}{n}$ 

であるから、はさみうちの原理より

$\lim\limits_{n\to\infty}\log\dfrac{a_n}{a_{2n}}=0$

ゆえに、$\lim\limits_{n\to\infty}\dfrac{a_n}{a_{2n}}=1$


　

(4) $b_n=\dfrac{2^{2n}(n!)^2}{\sqrt{n}(2n!)}=\dfrac{1}{\sqrt{2}}\cdot\dfrac{a_n^2}{a_{2n}}$

であることが計算により確かめられる。これより、

$\lim\limits_{n\to\infty}a_n=\lim\limits_{n\to\infty}\sqrt{2}b_n\cdot\dfrac{a_n}{a_{2n}} = \sqrt{2}\cdot\sqrt{\pi}\cdot 1 = \sqrt{2\pi}$

以上より、題意は示された。

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極限における様々な手法を組み合わせ、また(4)の式変形も(3)の式と導くべき極限を考えればひらめくことのできる式変形を用いて証明しました。手順は多いですがよく復習すれば極限の力をつけることができる良問でしょう。ぜひ学習に役立ててください。

スターリングの公式　解法

元の行列の行と列を入れ替えたもの.
 
$\begin{bmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 4 & 5 & 6 \\ 7 & 8 & 9 \end{bmatrix}^{T} = \begin{bmatrix} 1 & 4 & 7 \\ 2 & 5 & 8 \\ 3 & 6 & 9 \end{bmatrix}$

ある行列の転置行列を再び転置したものは元の行列に戻る（再帰性）

さらに, ある行列について，その行列と転置行列が等しくなる時，対称行列という.

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